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元気なうちにやりたかったことをやろう!そんな思いで2011年3月より8月までマラウイで薬剤師として派遣されるマラリエ生活を綴った日記です。
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2024/09/21 (Sat)
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2011/09/01 (Thu)

マラウイでは国の機関にかかる場合医療は全て無料。
他に何があるかというとプライベートのクリニックや教会系列が運営している病院。
ちなみに警備員の子供が県病院にかかったけどなかなか治らずプライベートのクリニックに
かかったときは診療費・薬代込みで500kw(マラリア疑い)かかったそうだ。
これは彼の1日分の給料の1.5倍程度。ということで、みんなまずは公共の医療機関にかかる。
 
私の病院の薬局でやること。薬のほとんどがバラ錠のボトルで入荷される。
その時々で同じ成分でも違う会社、国からの薬が届く。
国の予算のうち40%を寄付で賄うマラウイはなるべく安い薬を買っているのだと思う。
このため、同じ成分なのにあるときはピンク色、あるときは白色になったりする。
日本のように薬に刻印があるわけでもない。
パッキングの際に同じような外見の薬が混入したら見分けがつかない。
P1080649.JPG0fa76522.JPGP1080654.JPG







 
とにかく、まずはパッキング。台湾の寄付で送られた器具を使って手作業。
マラウイの基準では痛み止めは5日間、抗生物質は7日間ということだが
慢性的な薬不足で痛み止めは3日間、時に2日間、抗生物質は5日間のみ調剤する。
朝の2時間くらいをひたすらパッキング。日本では機械が1回の服用ごとにパッキングしてくれる。
マラウイでは1回の処方量の決まった数を袋に入れる。
袋には時間ではなく太陽の絵。これは時間をわからない人がいるから。
HIV治療の医師が「太陽が昇ったら飲み、太陽が沈んだら飲むように言ってる」と言っていた。
患者はパーソナルブックというお薬手帳のようなものを持っている。
それに医師が処方を書き、薬局でその薬が渡される。
でももちろん薬がないときも多々あるわけで、痛み止め、抗生物質については容易に薬局で
処方変更をしている、もしくは「out of stock(在庫なし)」と言って終わる。
日本では医師に問い合わせて変更するが、PHSも無いし窓口に電話もない。
「せめて、パーソナルブックに変更内容を書こう。次に医師が見たときに前回の薬が効いているか効いていないかわからないしアレルギーがあったらどうするの?」と当初から言ってきたものの
実際長蛇の列に対してそれを行おうとするスタッフはいない。
P1080650.JPGP1080656.JPGP1080734.JPG





 


マラウイでは外来の患者も入院の患者も病院内の薬局が調剤する。
一般のお店にも薬は売っていて熱さましなどが2錠10kw程度で売られている。
でも無料が一番。なので、薬局は忙しくなる。
P1080648.JPG







 
マラウイでは全国で薬剤師がまだ100人にも満たない。
私の病院にも薬剤師はいない。
最初はそのことに驚いていたが日本より分類わけがあるんだと気が付いた。
私と一緒に働いていた同僚はpharmacy technicianと呼ばれる職種で薬剤師の1つ下の位。
薬局には3名のpharmacy technicianと2名のアシスタントがいた。
pharmacy technicianは在庫の管理、倉庫から薬を出す、卸への発注データの入力なども
しつつ調剤や病棟払い出しなどを行う。
アシスタントは何の資格もないのでパッキングと調剤で患者へ投薬もしていた。
テクニシャンのモーゼスは来年、学校に通って薬剤師になりたいと言う。
何が違うのかというと薬剤師になると保健省で働けると言うことだった。
臨床をやりたいのであれば、テクニシャンでいいのだ。
つまり、日本では薬剤師という職種であらゆることが出来るけどマラウイでは分類わけが細かい。
 
薬がない。卸に発注しても100%発注どおりにくることはない。
病棟への払い出しが週2回で1回に出来ないか?と提案したところ
病棟への払い出しも在庫切れが起こるため回数を増やさざるをえない、ということだった。
結局、薬が足りなくなるため、2時間かかって卸に月の途中で薬を取りに行く。
これはテクニシャンが同行しなくてはならず、薬局に人が少なくなる。
患者が待つことになる。
 
今度は取りに行くためのガソリンが無い。ガソリンを探しに大きな都市に行く。
そのためのガソリンが無い。刑務所に借りに行く。今日は無いからやっぱり今日は行けない。
そんなことが日常。
 
薬がないためプライベートの卸から購入する。薬の金額は公共の卸の4~5倍だそうだ。
そうすると病院がさらに赤字になる。すると、公共の卸に支払いが滞る。
すると公共の卸の経営も落ちてくる。すると、公共の卸は薬が買えない。
悪循環。ではお金をどさっとあげればいいのか?
きっと一時的な解決になるのみで同じことの繰り返しになるだろう。
制度、システムを変える、末端の意識を変える、どれも難しい。
あ~、難しい・・・。
 
ある日、村へ行くための救急車を待っていたところ、あっきーが
「門の外で赤ちゃんが生まれたって!」というのであっきーと見に行く。
病院の門まであと10メートル。そこで10名ほどのマラウイ人が腰に巻いている布を広げてかくまっている。
覗くと小さな赤ちゃんとお母さんが横たわっている。どちらも命には問題なし。
「すごい、すごいなぁ」とあっきーと驚いているとスタッフが詳細を教えてくれた。
「彼女は27キロ先の村から歩いてきたんだけど間に合わなかったのよね。昔はよくあったこと。」
いや~、すごいなぁ。すごい。強いなぁ。
 
県病院の傘下にヘルスセンターと言う村レベルのクリニックがある。
ムジンバ県病院は約30のヘルスセンターを受け持つ。
その中で救急車が常備しているところは数えられるくらい。
車も村に行くとほとんど通っていない。だから歩く。
マラウイには国道1号線が南北に通っていてそこはアスファルト。
他の道はほぼ舗装されていない。
バスで移動していると北海道のような果てしない道をどこまで歩くんだ?
というくらいみんな歩いている。すごい。
 
私は当初赴任して「なんでこんな元気な人たちが薬をもらうんだ!?
だから薬が足りなくなるんだ!!全く!!」と思っていた。
でも今は違う。予防は大切。いざと言うときに村レベルの人たちはすぐに医療にかかれない。
なら普段から少しでもおかしいと思ったらかかるべきなのかもしれない。
とはいえ、抗生物質の耐性の問題などもありそれを考えると、あ~難しい!!
 
県病院に行ってもマラウイで輸液は3種類。
生理食塩水、5%ブドウ糖、リンゲル液。この5ヶ月の中で生理食塩水さえ在庫切れをおこした。
日本にあるようなアミノ酸が入った点滴や、まして高カロリー輸液なんて無い。
食べられなくなったら死ぬ。それがある意味自然なのかもしれない。
 
薬がないなら増やそうと、日本にいるときに腎機能によって用量を変えることを考えた。
でも県病院でさえCreが測れず指標となる採血ができない。色んな「無い」が効率を悪くしている。
病院にコピー機が1台あった。ある日壊れた。あらゆるものがコピーできず困る。
結局帰国まで直す事も新しく購入することも無かった。
ヘルスセンターではコピー機なんて無い。あ~、難しい!!
 
私はHIV薬物療法について簡単な講義を行っていた。
今までHIVは全く関わったことがなく初めて調べた。
あるとき講義を村で行ったときに「母子感染の薬物療法についても講義してほしい」と
言われその声をきっかけに調べた。
母子感染のリスクを下げるには3つの方法がある。
  • 薬物療法
  • 授乳をしない
  • 帝王切開
このうち帝王切開は医療的に危険。授乳をしないということに関してマラウイでは6ヶ月までは授乳可。
それ以降はダメだった。(7月からガイドラインが変わり授乳はOKになった)
しかし考えた。
代替ミルクがなく授乳をやめて栄養失調になり感染症で死亡するのと、
栄養を保ち感染するけど長生きするのとどっちがいいのか。
どこまでその赤ちゃんが生き延びるかなんて誰にもわからない。
個人、国、世界のため?どこのためにどう決めるべきなのか?
本来ならそれを母親に決めさせる。それが日本的考えでそれを私もAIDS隊員に言った。
するとAIDS隊員が「母親が理解できるレベルではない」と。
ならば、こちらで決めて「こうして!」と言うしかない。あ~、難しい!!

そして、マラウイのガイドラインで搾乳してあたためてから授乳させると
ウィルスが死滅するため推奨していたのでそれを村で説明したことがあった。
すると説明途中からヘルスセンターのスタッフが首をふる。
理由と聞くと、文化的に搾乳がだめらしい。ここでも難しい!!そう思った。
 
マラウイに行って何を一番思ったかというと「難しい!」である。
支援についても、医療についても本当に難しい。
でも何もしなければ変わらないし、変わるのかというとそうは言い切れない。
彼ら自身がが変わることを望んでいるのかもわからない。
本屋は大きな町に何件しかない。新聞も今は200kwと高価。
ラジオに情報源を頼る一般人にとって、限られた情報の中で新しい情報も無い中でど
う変わりたいかそれを考えることさえできるのだろうか?
本当に難しい。
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